旅行業登録をするためには営業所が必要です。
営業所には、
- 登録票、料金表の掲示
- 旅行業約款の掲示もしくは備え置き
をしなければなりません。
これはOTAのようにインターネット上で取引を行う旅行業者であっても同じで、営業所を用意して、上記のような掲示をしなければなりません。
営業所については、広さや構造などの制限はないのですが、旅行業登録手続きを進める上で、意外な落とし穴になることがありますので、注意点をまとめてみます。
旅行業の営業所としての使用権原を証明できればOK
先述のとおり、旅行業の営業所には広さや構造などについての制限はありませんが、審査の中で使用権限があるかどうかだけは判断されるため、多くのケースでは、使用権限があることを確認するために使用権原を証明する書類を提出する必要があります。
この点、第1種旅行業の申請の際や、千葉県での手続きにおいては使用権限の確認がない(営業所についての書類提出を求められない)のですが、これはもちろん使用権限のない営業所を使用していいという意味ではなく、自己の責任において使用権限のある営業所を使用しなければいけないということです。
なお、本題からは外れますが、「権原」と「権限」の違いが紛らわしいので念の為簡単に解説しておきます。
「権限」の法的な根拠となるのが「権原」で、例えばマンションの賃貸借であれば、
- 賃貸借契約=権原→部屋を使用する権利がある=権限
- 賃貸借契約書=権原を証明する書類
ということになります。
例示したケースのように、営業所を借りているケースでは、賃貸借契約書が営業所の使用権原を証明する書類です。
レンタルオフィスを旅行業の営業所として使う
レンタルオフィスであっても登録票などを備え付けられる専有部分があれば、問題なく旅行業の営業所として使用できます。
レンタルオフィスを営業所して使用する場合は、賃貸借契約書を提出します。
レンタルオフィスによっては通常契約書は発行しておらず、旅行業登録などの手続き用に数千円から1万円程度の手数料を取って発行していることもあります。
なお、いわゆるバーチャルオフィスやフリーアドレスのような、専有部分のない形態だと、登録票などを備え付けることができないため、旅行業の営業所としては使用できません。
自己所有物件を旅行業の営業所として使う
社長個人の自宅など、自己所有の物件を旅行業の営業所へ使うことは問題ありませんが、権原を証明する書類に注意が必要なケースがあります。
個人事業で事業主本人が所有
個人事業で旅行業をするときに、事業主本人が所有する物件を営業所に使用するときには、不動産(建物)の登記簿謄本を提出します。
登記簿謄本は法務局で取得することができます。またオンラインで取得して郵送してもらうことも可能です。
会社が旅行業を行い社長個人が所有
旅行業登録をするのは会社で、営業所が社長個人が所有する物件の場合、法律上は会社と社長は別人格とみなされますので、会社と社長の間の契約書(賃料が発生するなら賃貸借契約書、賃料が無料なら使用貸借契約書)を提出しなければなりません。
さらに自治体によってはこれだけでは足りず、例えば東京都では、契約書に加えて、
- 建物の登記簿謄本(社長所有の確認)
- 公共料金の請求書(住居表示の確認)
が要求されます。
分譲マンションの注意点
意外とトラブルになりやすいのが分譲マンションの1室を営業所にしようとするときです。
「自分の持ち物なんだから好きに使えるだろう」と考える方も多いのですが、ほとんどの分譲マンションの管理規約には、”区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。”と規定されています。
旅行業の営業所として使用することは、この規定に反することになりますので、管理組合から、旅行業の営業所として使用することの同意書を得て、提出する必要があります。
自治体によっては同意書まで求めないこともあるかもしれませんが、同意を得ていなければ開業後にマンション内でトラブルになる可能性もありますので、同意が得られない場合には旅行業の営業所としては使用できないと考えておくべきです。
賃貸マンションの1室を旅行業の営業所として使う
賃貸マンションの1室を旅行業の営業所として使用することも問題ありません。
このケースでも、提出するのは賃貸借契約書ですが、内容について注意が必要なポイントがあります。
使用目的
賃貸借契約書上の使用目的が「事務所」など、旅行業に使用できる目的かどうか確認しましょう。
賃貸マンションを借りるときに住居として借りたときはもちろん、事務所として借りたときであっても、賃貸借契約書上の使用目的が「住居」となっていることがありますので、注意が必要です。
契約の残存期間
旅行業登録申請の時点で、契約期間が残っているかも注意が必要なポイントです。
賃貸借契約書には、契約期間が満了したら自動的に更新されるような条項が入っていることが多いのですが、稀にそのような条項が入っていないことがあり、契約書に書かれている契約期間が終わってしまっている、もしくは残存期間が非常に短く審査完了まで残っていない、ということがあります。
このような提出時点で残存期間がない契約書では、権原を証明する書類として認められないため、管理会社やオーナーに依頼して、新たに契約書を作成する必要があります。
意外とこのやり取りに時間がかかることも多いので、旅行業登録を進めるときには、早めにこの点を確認しておきましょう。
転貸(又貸し)の物件を旅行業の営業所して使う
旅行業の営業所として使用する物件が、転貸(又貸し)になっていることもあります。
例えば、知っている人やグループ会社などが借りているオフィスの一部を借りるようなケースです。
このようなときには通常の賃貸よりも多くの書類が必要となります。
大家をA、大家から借りている人をB、自社をCとしたときには、
- AとBの賃貸借契約書
- BとCの賃貸借契約書
- AがBに賃貸している物件をCへ旅行業の事務所として賃貸することを承諾する文書(承諾書など
を揃えなければなりません。
賃貸人(大家)としては、一般的に転貸をあまり好まないため、賃貸人からの同意が得られないケースも多いため、転貸物件を旅行業の営業所として使おうと計画している場合には、可能な限り早い段階で賃貸人に確認を取ることをおすすめしています。
旅行業の営業所まとめ
ここまで旅行業に使用する営業所についてまとめてみましたが、問題が発生したときに特に解決が難しいのは、第三者が絡み、かつ慣習的にひっくり返しにくい以下のようなケースでです。
- 賃貸物件の使用目的→大家が事務所利用を認めていないとアウト
- 分譲マンションの管理組合の同意→同意をしない管理組合が多い
- 賃貸人からの転貸の同意→転貸を嫌がる場合が多い
この辺りが問題になりそうなときには、早め早めに検討していかなければ、ギリギリになって新たな営業所を探すことになり、数ヶ月単位で事業開始が遅れてしまうことにもなりかねません。
この点、シグマのような旅行業登録申請サポートの実績が豊富な行政書士事務所が関与することにより、早期に問題になり得るポイントを発見し、先回りで手を打っていくことができます。
ご自身で手続きを進めることに不安があるようでしたら、シグマにご相談ください。