旅行業登録をして旅行業をはじめるときに、開業資金や運転資金として融資を受けたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
創業時には利用できる融資の選択肢も多くないことがほとんどで、融資を受けられるかどうか不安な方もいらっしゃるかもしれません。
そこでこの記事では、旅行業開業時の融資について簡単に解説していきます。
※2024年4月時点の情報をもとに記事を作成しています。
使える融資は大きく分けて2つ
創業時にある程度低金利で受けることができる融資は、一般的には日本政策金融公庫の創業融資か、信用保証協会の保証を受けて銀行や信用金庫から借り入れる制度融資の2つしかありません。
当たり前ですが、創業時には過去の事業実績も決算書もありませんので、金融機関としても判断が難しく融資には消極的になります。
そのため、十分な担保となる不動産を所有していたり、他の事業で付き合いがあったりといった特別な事情が無い限りは、銀行から直接借り入れるいわゆるプロパー融資は難しいのが現状です。
融資額の上限は、自己資金の額にもよりますが、現実的には2,000万円程度が上限と考えておくのが無難です。
融資審査のポイント
融資審査の際の代表的なポイントをいくつか紹介します。もちろんここで挙げる以外にも様々な要素が審査に影響しますが、これらを押さえられていると融資審査には有利になります。
自己資金
自己資金は多ければ多いほうが良いのは当たり前ですが、創業融資の場合には必ずしも十分な自己資金がなければ融資を受けられないというわけではありません。
ただし、旅行業登録の基準資産を満たすために融資を受けることはできません。なぜならば、原則として旅行業登録後でなければ融資を受けられないため、旅行業登録前の段階では、そもそも審査まで進みません。
例えば、第3種旅行業登録をするためには、300万円以上の基準資産額が必要になりますので、新たに会社を設立して、同時に第3種旅行業登録(協会加入)をしようとした場合には、資本金として300万円以上に加えて協会への入会金と弁済業務保証金が必要になります。
この資本金と協会分の資金については、旅行業登録前に必要になる資金なので、日本政策金融公庫の新規開業資金も、制度融資も利用することができないため、自己資金として用意する必要があります。
また、代表者個人が消費者金融などで借り入れをしていることをご心配される方もいらっしゃいますが、そちらはそれほど心配する必要はありません。
ただし、税金やクレジットカードも含めて支払いや返済が滞っているようなケースですと、かなり不利に働く可能性があります。
業界経験
やはり旅行業界で働いた経験があると、事業を軌道に乗せられる可能性がより高いと判断されやすいので、業界経験は審査上有利に働きます。
旅行会社で働いていたということだけでなく、観光業界で働いていた経験や、事業経営の経験などもプラスになる可能性がありますので、そういった経験があるのであればしっかりアピールしましょう。
事業計画
事業計画を作成する際には、集客方法や資金繰りなど、将来を予測して作っていくことになると思いますが、あまり極端に楽観的だったり悲観的だったりしないように気をつけましょう。
未来のことなので誰にも本当のところはわかりませんが、あまりにも楽観的な予測をしていると、経営能力や数字の把握能力が不足していると評価されかねませんし、悲観的すぎると「この計画の通りだと融資の返済ができないのでは」となってしまいます。
一定の合理性があって現実的な予測に基づいた事業計画も審査のポイントになってきます。
どちらを利用するべきか
シグマでオススメしているのは日本政策金融公庫の新規開業資金です。オススメしている理由を説明します。
融資実行が早い
まず融資申込みから実行までの期間が短いというのが大きいです。
多くのケースでは、融資申込みから1ヶ月~1ヶ月半程度で銀行に入金されます。旅行業をはじめるときには様々なことがすごいスピードで進行していきますので、実行までの期間が短いのはありがたいという方が多いです。
一方で制度融資ですと、信用保証協会の審査に時間がかかることが多いので、融資申込みから実行まで3ヶ月以上かかることも珍しくありません。
保証料を考えると制度融資のほうが返済額が多くなることも
金利については、様々な条件で決まるので一概にお話するのは誤解を生じる可能性もあるのですが、制度融資のほうがやや低くなることが多いようです。
ただし、制度融資では信用保証協会へ支払う保証料が必要(日本政策金融公庫の創業融資は無担保無保証が前提)になり、それを計算に入れるとコストの総額としては日本政策金融公庫のほうが有利というケースが多いです。
注意点
さきほども少し触れたのですが、融資の審査は支店や担当者によって結論が変わってくるという部分がありますので、飛び込みで融資相談に行くことにはリスクがあります。
もし可能であれば、顧問税理士の方などの資金調達の専門家も含めて知人友人などから担当者を紹介してもらうというがよいでしょう。