旅行業界の中で培ってきた知識・経験・人脈を生かして、旅行業で起業を検討されている方も多いのではないでしょうか。シグマでも、多くの旅行会社にお勤めの方の旅行業での起業をお手伝いし、成功されている経営者様を多数存じ上げております。
私ども行政書士は、旅行会社の設立手続きや旅行業登録の申請手続きなどをお手伝いすることができますが、起業を成功させるためには社長となる起業家の方の努力が鍵となります。しかし、「勘」と「経験」と「度胸」だけでは起業は成功させることはできません。
そこで、旅行会社にお勤めの方の起業をお手伝いしてきた行政書士が、独立開業される前に最低限押さえておいておきたいポイントを3つお伝えしたいと思います。
その1「円満退社」
旅行会社にお勤めの方が独立開業する際にまず大事なポイント、それは前職を「円満退社」することです。
シグマのお客様では、起業して成功されている方は、起業後も前職と取引関係にある方がほとんどです。どんなに知識・経験・人脈があっても、起業してすぐの会社は、資金力・信用力で劣ることがあります。
そのような時に、前職の旅行会社に協力して頂ける関係であることが大事になってきます。円満に退社するためには、早めに退職する旨を告げて、引き継ぎをしっかりやることが重要です。
前職の旅行会社の取引先を、断りなしに持って行ってしまうと、円満退社することは難しいでしょう。
その2「資金」
旅行業で起業するためには、まとまったキャッシュ(現金)が必要になります。
たとえば第3種旅行業登録を取得するためには、旅行業協会へ入会する場合は約510万円のキャッシュが、旅行業協会へ入会しない場合は約760万円のキャッシュが必要になります。
この金額には、営業所を借りるための保証金や賃料、営業所に置く机・椅子・電話・パソコン・複合機などの営業所設備費、そして、事業開始当初の運転資金は含まれていないので、事業規模にあった資金を準備することが必要になるでしょう。
シグマでは、日本政策金融公庫の創業時融資を受けるサポートもしておりますので、事業開始後の運転資金について不安があれば一度ご相談ください。
株式会社設立後に第3種旅行業登録申請を行うための費用目安
※初年度の取扱高を2億円未満とした場合
旅行業協会への入会あり | 旅行業協会への入会なし | |
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資本金相当額 | 4,500,000円 | 7,000,000円 |
定款認証費用(株式会社) | 52,000円 | 52,000円 |
登録免許税(株式会社) | 150,000円 | 150,000円 |
申請手数料(東京都) | 90,000円 | 90,000円 |
行政書士代行費用(実費含む) | 300,000円 | 270,000円 |
合 計 | 5,092,000円 | 7,562,000円 |
その3「スケジュール」
旅行会社を作るためには、株式会社の会社設立手続きと旅行業登録申請を行うことになります。旅行業協会へ入会する場合は、旅行業協会への入会申請手続きも必要になります。
会社設立手続きと旅行業登録申請の準備は同時に進めることができますが、会社設立手続きが完了してからではないと、旅行業登録の申請はできない点に注意が必要です。
残高証明書の取得
さらに、会社設立後に最初の決算期が到来していない新設法人が旅行業登録申請を行う場合は、残高証明書が必要になる場合があります。登録行政庁(旅行業の登録申請書の提出先のことを、登録行政庁と呼びます)が東京都の場合は残高証明書の提出は不要になりましたが、登録行政庁が神奈川県や千葉県の場合は、新設法人が旅行業登録申請を行う場合は、残高証明書の提出が必要になります。
残高証明書は、会社設立後に会社名義の銀行口座を開設し、その銀行口座に資本金相当額を移動してから、発行を受けることになります。法人口座を開設する金融機関によっては、口座開設の審査期間が1~2週間かかる場合がありますので、会社設立日から登録行政庁への旅行業登録申請まで1か月近く期間を要する場合があります。
行政庁や旅行業協会の手続き・審査期間
また、登録行政庁へ旅行業登録申請を行った場合でも、その日のうちに、旅行業を営むことができるわけではありません。
東京都内に主たる営業所を置く旅行会社は、東京都へ旅行業登録申請を行いますが、申請書が受理されてから営業ができるまでは、最短でも1か月強の日数が必要になります。
なお、旅行業協会へ入会する場合は、登録行政庁へ申請する前に、旅行業協会へ入会審査があるため、開業まではさらに期間を要することになります。
旅行業協会へ入会する場合の手続きの流れ
会社設立→法人口座開設→旅行業協会入会手続き→旅行業登録申請→営業保証金供託→営業開始
旅行業協会へ入会しない場合の手続きの流れ
会社設立→法人口座開設(残高証明書が必要な場合)→旅行業登録申請→営業保証金供託→営業開始
家族の理解はすでに得られていますか?
ここまで旅行会社設立手続きの技術的なお話をいたしましが、いざ、起業しようと決断されたときに一番大切なことは、家族の理解だと私どもでは考えています。
この記事を読まれている方はこれから起業したいという「起業予備軍」の方だと思いますが、独身の方ならばまだ身軽かもしれませんが、既に家庭を持たれている方が起業する際は、その家族にとって起業は一大事です。職を変えるという視点であっても、「転職」と「起業」は、全く別物だと考えてください。
起業はリスクを伴います。そのリスクは家族も一緒に背負うことになります。リスクは、収入面や社会保障面だけではありません。
起業当初は、起業家であるあなたも不安だと思いますが、家族はもっと不安になります。家族が不安のままの起業は、成功することはできないでしょう。
家族の理解がある起業家は、従業員が雇えない起業当初に業務を手伝ってもらうことや、資金的に援助もしてもらえるかもしれません。事業が軌道に乗ってからも、いざというときに支えてくれるのは家族です。
起業を決意して今の職場に退職願いを提出する前に、家族に起業のことをキチンと説明し、理解を得られるように根気よく説明を試みるべきです。家族の理解のある起業こそが、成功への近道だと私どもは考えております。