
「旅行会社を立ち上げたいが、何から手をつければいいのか」「複雑な法律や種別を分かりやすく知りたい」
旅行業の開業には、法的な登録が不可欠です。しかし、専門用語が多く、全体像を掴むのは簡単ではありません。
この記事では、これまで多くの登録支援を行ってきた専門家が、「旅行業登録の仕組み」から「開業までのステップ」まで、その全体像を1ページで凝縮して解説します。

旅行業登録の基礎知識と旅行業法の役割
行業登録とは
旅行業を営むためには、旅行業法に基づき、国や都道府県から登録を受けることが義務付けられています。一般的に「免許」や「許可」と呼ばれることもありますが、法的な正式名称は旅行業登録です。
旅行業法における「旅行者」の定義
旅行業法には「旅行者」という言葉が頻繁に登場しますが、これは現在旅行中の人だけを指すのではありません。これから旅行に行こうとしている人や、旅行の相談をしている人もすべて含まれます。つまり、顧客と接触し、集客を開始した時点から旅行業法のルールが適用されることになります。
なぜ旅行業には厳しいルールがあるのか
旅行は形のないサービスでありながら、時に非常に高額な取引が行われます。
- 代金を支払ったのに、当日ホテルが予約されていなかった
- 旅行中にトラブルが起きたが、会社と連絡が取れない
こうした事態から旅行者を守るために、旅行業法では以下の3つの柱を定めています。
- 事業者の選別(登録制):資産や責任能力のない事業者を排除する
- 情報の開示(書面交付):契約内容を十分に説明し、誤解を防ぐ
- 安全の確保(旅程管理):旅行者が確実にサービスを受けられるよう管理を義務付ける
旅行業登録を受けることは、単なる義務の遂行に留まらず、法令を遵守し、国に認められた信頼ある事業者であることを対外的に証明することにも繋がります。
旅行業登録が必要なケースと不要なケース
旅行業を営むためには登録が必要ですが、「具体的にどの業務が該当するのか」の判断は重要です。旅行業法では、報酬を得て一定の行為を事業として行うものを旅行業と定義しています。
ここでは、登録が必要な業務と、例外的に不要な業務について整理します。

旅行業に該当する4つの業務
旅行業法第2条に基づき、以下の行為を報酬を得て行う場合は登録が必要です。

企画旅行の実施に関する行為
旅行業者が目的地、日程、サービスの内容、旅行代金などの旅行計画を定めて実施する旅行のことを「企画旅行」と呼びます。
旅行計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ(募集型企画旅行)、または旅行者からの依頼により(受注型企画旅行)作成し、この計画に必要な運送や宿泊サービスや、これらに付随する食事場所、観光施設、観劇チケットをそれぞれのサービス提供者から仕入れ、手配する行為が「一定の行為」に該当します。
手配旅行に関する行為
航空機・鉄道・高速バスなどの運送機関、ホテル・旅館などの宿泊機関をそれぞれ個別に手配し、実施する旅行を「手配旅行」と呼びます。
航空券1枚の手配や、航空券と宿泊手配の組み合わせなど、手配旅行といっても様々な形態があります。手配旅行は、旅行業者が旅行者と運送機関・宿泊機関の間に入り、代理・媒介・取次ぎなどの法律行為を通じて、運送や宿泊サービスの手配を行う行為が該当します。
運送や宿泊サービスに付随して、レストラン、遊園地、観劇チケットなどの運送等関連サービスを手配する行為も「一定の行為」に該当します。
その他の付属的行為
企画旅行や手配旅行のための運送等サービスの手配行為に付随して、旅行者のために案内(ガイド・添乗など)をする行為や、旅券・査証取得手続き代行などの各種サービスを提供する行為が「一定の行為」に該当します。
旅行相談に関する行為
これから旅行業を営もうとする方でも意外に感じるかもしれませんが、旅行に関する相談業務も「一定の行為」に該当します。つまり、報酬を得て、事業として旅行相談に応じるのであれば、その行為は旅行業に該当することになります。
上記に掲げる4つの行為が「旅行業に該当する行為」になるため、これらの行為を、報酬を得て事業として行う場合には、旅行業の登録を受ける必要が生じます。
旅行業に該当しない業務
一方で、次の行為は旅行に該当しないため、報酬を得て事業として行ったとしても、旅行業登録は不要です。

付随的旅行業のみを行う
- 観光施設の入場券、観劇チケットなどの販売のみを行う
- 諸外国に入国するときに必要な査証取得代行のみを行う
- 旅行者の案内のみを専門に行う
レストランの手配、観光施設の入場券、観劇チケットの手配といった運送及び宿泊サービス以外の旅行サービスのことを「運送等関連サービス」と呼びますが、運送等関連サービスの手配や旅行者の案内、旅券・査証取得手続き代行などを単独で行う場合は、旅行業に該当しないため、旅行業登録は不要です。
添乗員派遣業者
- 旅行業者の依頼に基づき添乗員を派遣する
旅行者と直接の取引を行う関係にはないので、旅行業に該当しないため、旅行業登録は不要です。
もっぱら運送機関の代理を行う場合
- バス停近くの商店がバスの回数券の販売のみを行う
- 港のそばのガソリンスタンドでフェリー乗船券の販売のみを行う
上記の2つのケースは「運送機関の手配」に該当するため、本来ならば旅行業に該当する行為ですが、「運送機関の代理人」として乗車券、乗船券、航空券の代理販売のみを専門に行うときは、例外的に旅行業に該当しないため、旅行業登録は不要となります。
運送事業者、宿泊事業者が自らの業務範囲内のサービスを提供するとき
- 一般貸切旅客自動車運送事業者が、自社の貸切バスを利用して、日帰りバスツアーを実施する
- 旅館業許可を取得している宿泊業者が自らの宿泊施設と、他社が経営する近隣ゴルフ場と提携して、宿泊とゴルフプレイがセットなった「ゴルフパック」を販売する
運送等サービスを自ら提供し、これに運送等関連サービス(運送・宿泊サービス以外のサービス)の手配を付加して販売するような行為は旅行業に該当しないため、旅行業登録は不要です。
ランドオペレーター業を行う場合
旅行業者(海外の旅行業者)からの依頼を受けて、日本国内の旅行に関する下記の旅行素材の手配を行い報酬を得る事業を行う場合は、旅行サービス手配業の登録が必要になります。
- 貸切バス、ハイヤー、鉄道などの運送機関の手配
- ホテル、旅館、ホステルなどの宿泊施設の手配
- 全国通訳案内士、地域通訳案内士を除く有償ガイドの手配
- 免税店の手配
旅行業登録を取得すれば、旅行サービス手配業登録を重複して取得する必要はありません。
旅行業登録の種類は?
旅行業法には登録の種別として、第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業そして旅行業者代理業の5つの種別が定められております。これらの種別は取扱う業務の種別によって区別されています。

第1種旅行業
募集型企画旅行、受注型企画旅行、手配旅行、受託契約に基づく代理販売(受託販売)など、すべての国内海外の旅行業務を取り扱うことができる種別です。
第2種旅行業
海外の募集型企画旅行を自ら実施することはできませんが、これ以外の国内、海外の旅行業務を取り扱うことができる種別です。
第3種旅行業
海外の募集型企画旅行を自らが実施することはできません。国内の募集型企画旅行は、一定の条件を満たす限定的なものに限り実施することができます。
受注型企画旅行や手配旅行、受託契約に基づく代理販売などは、第1種、第2種旅行業者と同様に、国内・海外問わず取り扱うことができる種別です。
地域限定旅行業
海外の募集型企画旅行を自ら実施することはできません。海外の受注型企画旅行や海外の手配旅行も実施することはできません。国内の募集型企画旅行、国内の受注型企画旅行、国内の手配旅行は、一定の条件を満たす限定的なものに限り実施することができます。
受託契約に基づく代理販売は、第1種、第2種、第3種旅行業者と同様に、国内・海外問わず取扱うことができる種別です。
一定の条件とは
第3種旅行業、地域限定旅行業の取扱う業務には、「一定の条件」が付されているものがあります。
この一定の条件とは、一つの旅行ごとに、出発地、目的地、宿泊地及び帰着地が、その旅行業者の営業所の所在地とそれに隣接する市町村内(東京都の特別区を含む)、観光庁長官が定める地域内において実施させる旅行に限定されるということです。
一定の条件のもとで取扱うことができる旅行商品は、旅行先で参加するオプショナルツアーのような、着地型旅行商品のことです。
旅行業者代理業
旅行業者代理業は、報酬を得て、旅行業者のために、旅行業者の行う一定の行為について、代理して契約を締結する行為を行う事業のことをいいます。
旅行業者代理業者の行う業務範囲は、旅行業法には定められておらず、所属旅行業者との業務委託契約における委任の範囲に限定されております。また、旅行業者代理業者は、報酬を得て、事業として旅行相談業務を行うことはできません。
登録の種別と取り扱える旅行業務の範囲
登録の種別ごとの業務の範囲を表に整理すると下記のとおりです。
○:取扱可
×:取扱不可
△:一定の条件を満たす場合のみ取扱可
| 登録の種別 | 手配旅行 | 受託契約に基づく代理販売 | ||||||
| (海外) | 募集型
(国内) |
受注型
(海外) |
受注型
(国内) |
海外 | 国内 | 海外 | 国内 | |
| 第1種旅行業 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 第2種旅行業 | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 第3種旅行業 | × | △ | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
| × | △ | × | △ | × | △ | ○ | ○ | |
| 旅行業者代理業 | × | × | × | × | 所属旅行業者との業務委託契約における委任の範囲に限定 | |||
登録の前提となる要件にはどんなものがある?
旅行業または旅行業者代理業を営もうとする者は、行政庁の行う登録を受けなければなりません。
旅行業法上の登録とは、旅行業又は旅行業者代理業を営もうとする者が一定の資格要件を備えているという事実を、行政庁が登録簿に記載する一連の手続きのことを指します。
つまり、誰でも登録を受けられるわけではなく、登録を受けるためには以下の要件を満たしている必要があります。
申請者が以下の欠格事由のいずれにも該当していないことが求められます。
- 旅行業等の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(登録を取り消されたのが法人である場合、取消当時その法人の役員であった者も含む)
- 拘禁刑以上の刑または旅行業法違反により罰金刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
- 暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者)
- 申請前5年以内に旅行業務又は旅行サービス手配業務に関し不正な行為をした者
- 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記の1.~4.のいずれかに該当するもの
- 身心の故障により旅行業、旅行業者代理業、旅行サービス手配業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
- 法人であっては、その役員のうちに上記の1.~4.及び6.に該当する者があるもの
- 暴力団員等がその事業活動を支配するもの
営業所ごとに旅行業務取扱管理者を確実に選任すること

- 営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。また、従業員が10人以上の営業所では、複数の旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。
- 海外旅行を取り扱う営業所では、必ず総合旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。
- 申請者と同様に欠格事由に該当する旅行業務取扱管理者として選任することはできません。
- 旅行業務取扱管理者は常勤専任で営業所に就業する必要があり、他の営業所の旅行業務取扱管理者との兼務はすることはできません(地域限定旅行業のみ、ある一定の条件に該当する場合は、同一事業者の営業所間での兼任は可)。
基準資産額を満たしていること(旅行業のみ)
旅行業を遂行するために必要と認められる財産的基礎のことを「基準資産」といいます。
基準資産額は登録種別によって異なっており、第1種旅行業の場合は3,000万円以上、第2種旅行業の場合は700万円以上、第3種旅行業の場合は300万円以上、地域限定旅行業の場合は100万円以上の基準資産額が求められます。
基準資産額は資本金の額や純資産の額とは違います。
基準資産額の算定方法は、次の公式によって求めることができます。
旅行業の基準資産額の算定
[基準資産額]
=[資産の総額]-[創業費その他繰延資産]-[営業権]-[不良債権] -[負債]-[営業保証金又は弁済業務保証金分担金]
法人の場合は、基準資産額の算定には、最近の事業年度における貸借対照表に記載されている数値を使用します。

設立後最初の決算を終了していない場合は、貸借対照表が存在していないため、会社設立時における開始貸借対照表から算出します。個人の場合でも旅行業登録を申請することはできますが、その場合は財産に関する調書から基準資産額を算出します。
| 登録種別 | 基準資産額 | 営業保証金の最低額(旅行業協会保証社員でない場合) | 弁済業務保証金分担金の最低額(旅行業協会保証社員の場合) |
| 第1種旅行業 | 3,000万円以上 | 7,000万円 | 1,400万円 |
| 第2種旅行業 | 700万円以上 | 1,100万円 | 220万円 |
| 第3種旅行業 | 300万円以上 | 300万円 | 60万円 |
| 地域限定旅行業 | 100万円以上 | 15万円 | 3万円 |
| 旅行業者代理業 | なし | なし | なし |
| 旅行サービス手配業 | なし | なし | なし |
営業保証金及び弁済業務保証金分担金の額は年間取引見込み額により変動します。

所属旅行業者が2社以上ないこと(旅行業者代理業のみ)
旅行業者代理業を営もうとする場合は、その前提として所属旅行業者を特定し、その旅行業者との間で旅行業者を代理することについての業務委託契約を締結する必要があります。
旅行業者代理業では、所属旅行業者は1社のみに限定され、2社以上の所属旅行業者とは業務委託契約を締結することはできません。つまり一社専属となります。
登録種別ごとに定められている事業目的が記載されていること
法人で申請する場合は、履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)、定款の事業目的の記載が次の内容になっていることが求められます。
第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業の事業目的
『旅行業』又は『旅行業法に基づく旅行業』
地域限定旅行業の事業目的
『旅行業者代理業』又は『旅行業法に基づく旅行業者代理業』
旅行サービス手配業の事業目的
『旅行サービス手配業』又は『旅行業法に基づく旅行サービス手配業』
旅行会社の会社名(商号)
東京都などが該当するのですが、登録行政庁によっては、既存の旅行業者・旅行業代理業者・旅行サービス手配業者との類似商号に該当する場合は、登録を受けることができない場合がありますので、商号も注意すべき点です。
登録行政庁は?
旅行業登録に関する書類の申請・届出先である行政機関のことを、「登録行政庁」と呼ぶのですが、この登録行政庁は、登録種別により異なります。
まず、第1種旅行業の場合は、主たる営業所の所在地に関わらず、観光庁長官が登録行政庁になります。
次に、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業、旅行業者代理業、旅行サービス手配業の登録行政庁ですが、これは主たる営業所の所在地を管轄する都道府県知事が登録行政庁となります。
| 登録種別 | 登録行政庁 |
| 第1種旅行業 | 観光庁長官 |
| 第2種旅行業 | 主たる営業所の所在地を管轄する
都道府県知事 |
| 第3種旅行業 | |
| 地域限定旅行業 | |
| 旅行業者代理業 | |
| 旅行サービス手配業 |

例えば、登記簿上の本店が神奈川県横浜市にあり、旅行業の営業活動を行う主たる営業所は東京都港区にある法人が第3種旅行業登録を申請する場合、申請書類の提出先は神奈川県ではなく東京都になります。神奈川県の旅行業担当窓口に書類を持参しても、受け取ってもらえません。
登録手続きの流れは?
旅行業登録申請手続きの流れは、登録種別や登録行政庁によって若干の違いはありますが、主たる営業所が東京都内にある会社を想定すると、次のような流れになります。
旅行業登録(第1種、第2種、第3種、地域限定旅行業)と同時に旅行業協会へ入会する場合は、登録行政庁への申請前に、旅行業協会への入会手続きを完了させていく必要があります。
第1種旅行業登録の流れ ※主たる営業所が東京都内の場合
- 登録要件の調査・確認
- 申請書類の作成
- 観光庁へ申請書類を提出(いわゆる仮申請)
- 観光庁での申請前ヒアリング
- 関東運輸局へ申請書を提出(いわゆる本申請)
- 審査(観光庁)
- 登録通知書の受領
- 登録免許税の納付
- 弁済業務保証金分担金(旅行業協会の保社員の場合)の納付
- 弁済業務保証金分担金の納付書(供託書の写し)を関東運輸局へ提出
- 登録票・旅行業約款・料金表などの整備後、営業開始
第2種、第3種、地域限定旅行業登録手続きの流れ ※主たる営業所が東京都内の場合
- 登録要件の調査・確認
- 申請書類の作成
- 東京都旅行業担当窓口でのヒアリング後、不備がなければ申請書類を提出
- 審査(東京都)
- 登録通知書の受領
- 申請手数料の納付
- 営業保証金の供託、弁済業務保証金分担金(旅行業協会の保証社員の場合)の納付
- 供託書の写し(弁済業務保証金分担金の納付書)を東京都へ提出
- 登録票・旅行業約款・料金表などの整備後、営業開始
旅行業者代理業登録手続きの流れ ※主たる営業所が東京都内の場合
- 登録要件の調査・確認
- 所属旅行業者と「旅行業者代理業業務委託契約」を締結
- 申請書類の作成
- 東京都旅行業担当窓口でのヒアリング後、不備がなければ申請書類を提出
- 審査(東京都)
- 登録通知書の受領
- 申請手数料の納付
- 所属旅行業者へ登録通知があった旨を連絡
- 登録票・旅行業約款・料金表などの整備後、営業開始
旅行サービス手配業登録手続きの流れ ※主たる営業所が東京都内の場合
- 登録要件の調査・確認
- 申請書類の作成
- 東京都旅行業担当窓口でのヒアリング後、不備がなければ申請書類を提出
- 審査(東京都)
- 登録通知書の受領
- 申請手数料の納付
- 営業開始
旅行業協会とは?
旅行業協会には、日本旅行業協会(JATA)と全国旅行業協会(ANTA)の2団体があります。旅行業協会は、旅行業法で次の業務を行う旨が規定されています。

- 旅行者及び旅行に関するサービスを提供する者からの旅行業者等の取り扱った旅行業務に対する苦情の解決
- 旅行業務の取扱いに従事する者に対する研修
- 旅行業務に関し社員である旅行業者又は当該旅行業者を所属旅行業者とする旅行業者代理業者と取引をした旅行者に対しその取引によって生じた債権に関し弁済をする業務(以下「弁済業務」という。)
- 旅行業務の適切な運営を確保するための旅行業者等に対する指導
- 旅行業務に関する取引の公正の確保又は旅行業及び旅行業者代理業の健全な発達を図るための調査、研究及び広報
旅行業協会に加入するかどうかはそれぞれの旅行業者が自由に決めることができます。つまり、旅行業協会への加入は必須ではなく、加入しなくても旅行業を始めることができます。
旅行業協会に加入する一番のメリットは、旅行業営業中に納付しなければならない営業保証金の額を5分の1の額に減額できるところだと言えるでしょう。
第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業は、登録通知を受領後に営業保証金を法務局へ供託することが義務付けられております。
第3種旅行業、地域限定旅行業の場合は営業保証金を法務局に供託することを選択する事業者さんもいらっしゃいますが、第1種旅行業、第2種旅行業の場合は法務局に供託する営業保証金の額は高額になるため、財務面では旅行業者に大きな負担になる場合があります。
そこで、旅行業協会に入会して旅行業協会の保証会員になり、営業保証金の5分の1の額の弁済業務保証金分担金を旅行業協会へ納付することによって、営業保証金供託の免除を受けることができるのです。
旅行業協会へ加入するメリット
旅行業協会へ加入して保証会員になるメリットをまとめてみました。
- 営業中に預けておく金額を5分の1に減額することができる
- 弁済業務が発生した場合、旅行業協会がその事務を行うため、弁済に関する手続きの負担を軽減できる
- 旅行業協会に加入することで、旅行者に安心感を与えることができる
- 旅行業に関する最新情報の提供を受けることができる
- 会員向けの研修会・勉強会に参加できる
- 同業者との横のつながりができやすい
とはいえ、旅行業協会へ加入するためには、入会金と年会費が必要になります。
入会金・年会費は日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)では異なりますし、全国旅行業協会に加入する場合は、主たる営業所の所在地の都道府県によっても異なってきます。
旅行業協会の入会金
| 登録種別 | 日本旅行業協会(JATA) | 全国旅行業協会(ANTA)
※主たる営業所が東京都内にある場合 |
| 第1種 | 800,000円 | 1,600,000円 |
| 第2種 | 800,000円 | 720,000円 |
| 第3種 | 800,000円 | 580,000円 |
| 地域限定 | 800,000円 | 420,000円 |
旅行業協会の入会費
| 登録種別 | 日本旅行業協会(JATA) | 全国旅行業協会(ANTA)
※主たる営業所が東京都内にある場合 |
| 第1種 | 350,000円 | 111,000円 |
| 第2種 | 350,000円 | 91,000円 |
| 第3種 | 350,000円 | 81,000円 |
| 地域限定 | 350,000円 | 45,000円 |
| 備考 | 上記の年会費に加えて、従業員一人あたり年額600円が加算されます。 | 上記の年会費に加えて、従たる営業所1か所毎に7,000円加算されます。 |
JATAとANTAの違い
日本旅行業協会(JATA)・全国旅行業協会(ANTA)のどちらの協会に入会されるか悩まれる方が多いですが、どちらの旅行業協会へ入会しても、受けられるサービスは、ほぼ同一だと言えるでしょう。

しかし、費用と入会手続きのスピードでは次のような違いがあります。
| 日本旅行業協会(JATA) | 全国旅行業協会(ANTA) | |
| 費用 | 高い | 安い |
| 入会手続きのスピード | 随時入会手続きを受付けているため、入会確認書の受領までの期間が短い。 | 概ね2か月に1回開催される常務理事会での承認が必要なため、入会承諾書を受領するまで期間を要する場合がある。また、協会(神奈川県や千葉県など)によっては、推薦者が必要になるため、手間と時間がかかる場合があります。 |
どちらの旅行業協会に加入するべきか
旅行業協会の保証会員として登録を予定している場合、登録行政庁へ申請書類を提出する際に、協会が発行する「入会承諾書」等の写しを添付する必要があります。そのため、申請前の段階でどちらの協会に加入するかを決めておかなければなりません。
一般的に、JATA(日本旅行業協会)とANTA(全国旅行業協会)には以下のような特徴の違いがあります。
加入スピードを優先するか、コストを優先するか
一日でも早く登録申請を行い、営業を開始したいと考える事業者様は、JATAを選択されるケースが多いです。JATAは入会審査を随時受け付けており入会審査期間はありますがスケジュールが比較的柔軟であり、申請までの時間を短縮しやすい傾向にあります。 一方で、入会金や年会費などの固定コストを抑えたいと考える事業者様は、ANTAを選択されることが多いです。
事業規模や取扱商品で比較する
- 日本旅行業協会(JATA):大手・中堅旅行会社が多く加盟しており、特に海外旅行やインバウンド業務を主力とする事業者が目立ちます。
- 全国旅行業協会(ANTA):中小規模の旅行会社が多く、国内旅行をメインに取り扱う事業者が中心です。47都道府県に支部があるため、地域に根ざした活動が特徴です。
業界内のネットワークで選ぶ
協会への加入は、万が一の際の営業保証金分担金の制度だけでなく、会員同士のネットワーク構築という側面もあります。自社が取り扱う旅行商品の特性や、将来的な事業拡大の方向性を考慮し、よりメリットの大きい協会を選択することが重要です。
旅行業登録完了(営業開始)までに必要な日数は?
登録行政庁の窓口に申請書を提出してから、登録行政庁において審査が行われ、登録通知書を受領するまでの期間は、登録種別や登録行政庁の都道府県によって大きく異なります。

当法人では、これまでの申請実績より、ご相談いただいてから開業までに必要な標準的な期間を次のようにお答えしております。
| 登録種別 | 主たる営業所の所在地 | ご相談から営業開始までに
必要な日数 |
| 第1種旅行業 | 東京都内 | 約4か月 |
| 第2種旅行業
第3種旅行業 地域限定旅行業 旅行業者代理業 旅行サービス手配業 |
東京都内 | 約2.5か月 |
| 第2種旅行業
第3種旅行業 地域限定旅行業 旅行業者代理業 旅行サービス手配業 |
神奈川県内 | 約1.5か月 |
登録に必要な諸費用の目安は?
旅行業登録に必要な費用として、登録行政庁に支払う登録免許税・申請手数料があります。
第1種旅行業の場合は90,000円の登録免許税が必要になります。
また、第2種・第3種・地域限定旅行業の場合は90,000円(登録行政庁が東京都の場合)、旅行業者代理業・旅行サービス手配業の場合は15,000円(登録行政庁が東京都の場合)の申請手数料が必要になります。
申請手数料は、登録行政庁に異なりますので、東京都以外の申請手数料を確認したい場合は、管轄の旅行業の担当窓口へご確認ください。
旅行業登録後に供託する営業保証金や、旅行業協会の保証社員になる場合は、弁済業務保証金分担金、入会金、年会費も準備しなければなりません。
細かい出費としては、法人で登録を受ける場合は、履歴事項全部証明書(登記簿謄本)を取得する手数料が、個人で登録を受ける場合は、住民票の取得費用も必要になります。
登録後、どんなことに気をつけるべき?
登録通知受領してから営業開始までの事務手続き
登録行政庁から登録通知書したからといって、すぐには営業を開始することができません。次のすべての手続きが完了してはじめて営業を開始することができます。
①-1(旅行業協会保証社員でない場合)営業保証金を営業所の最寄りの供託所に供託し、供託書の写しを登録行政庁へ提出
①-2(旅行業協会保証社員の場合)弁済業務保証金分担金を所属する旅行業協会に納付し、納付書の写しを登録行政庁へ提出
②『登録票』に必要事項を記入し、営業所内で旅行者に見やすいように掲示
③旅行者から収受する旅行業務の取扱料金を定めて、『料金表』を営業所内で旅行者に見やすいように掲示
④旅行業務取扱管理者に対して、『旅行業務取扱管理者証』を発行
⑤営業所以外の場所で旅行業務を取扱う者がいる場合は、『外務員証』を発行
⑥取引条件説明書面及び契約書面の交付の準備
旅行業登録は5年ごとに更新手続きが必要
第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業の登録の有効期間は新規登録の日から起算して5年です。
有効期間満了後も引き続き旅行業を営もうとするときは、有効期間満了日の2か月前までに更新手続きが必要になります。
更新手続きの際、新規登録とほぼ同様の申請書類を提出します。また、更新登録の際は、基準資産額を満たすことが難しい旅行業者さんが増える傾向がありますので登録後の財務管理が重要になってきます。
毎年の報告手続きが必要
第1種旅行業、第2種旅行業、第3種旅行業、地域限定旅行業の登録を取得した旅行会社は、毎事業年度が終了してから100日以内に、その事業年度における旅行業務に関する旅行者の取引の額を報告する義務があります。
営業保証金又は弁済業務保証金分担金の額は事業年度毎の取引額によって定められるため、取引額が増額した場合は、営業保証金の追加納付、弁済業務保証金分担金の追加納付が必要になる場合があります。
登録事項に変更事項が生じた場合は変更届出手続きが必要
会社名、本店所在地、代表者、営業所所在地、営業所名称などの登録行政庁への登録事項に変更が生じた場合は、変更発生日から30日以内に登録事項の変更届出を行う必要があります。
旅行業務取扱管理者の取扱について
営業所の旅行業務取扱管理者として選任した方が退職・異動などで変更が生じた場合、登録行政庁によっては変更届出手続きが必要になる場合があるので注意が必要です。
また、旅行業務取扱管理者として選任した方が全て欠けることになってしまった場合は、新たに旅行業務取扱管理者を選任するまでの間は、その営業所において旅行業務に関して新たな契約を締結することができません。
行政書士に手続きの代行を依頼する際のポイント
旅行業登録の手続きは、書類を揃えて行政庁へ持ち込むことで、ご自身で進めることも可能です。しかし、専門の行政書士に依頼することで、煩雑な事務作業の手間や時間を大幅に削減し、不備による遅延の不安を解消できるメリットがあります

もし代行を検討される場合は、以下の点に注意して依頼先を選ぶことを推奨します。
実績のある事務所を早期に選ぶ
行政書士にはそれぞれ専門分野があります。建設業や相続に強い事務所もあれば、観光法務に特化した事務所もあります。旅行業登録は独自の要件が多く、実務経験がないと手探りの対応になりかねません。事業の根幹となるライセンス申請を委託する以上、旅行業の登録実績が豊富かどうかを事前に確認することが重要です。
会社設立前の相談がベストな理由
これから新しく会社を設立して旅行業を始める場合、設立登記の「前」に相談することをお勧めします。 過去の事例では、会社を設立した後に相談をいただいた結果、資本金の額や事業目的、あるいは事務所物件の契約内容が旅行業の要件を満たしておらず、登記のやり直しや物件の借り直しといった余計な費用と時間が発生したケースがあります。 特に東京都で第3種旅行業を申請する場合などは、以下の項目が登録要件に適合しているか、設立段階で精査しておく必要があります。
- 商号および本店所在地
- 事業目的の文言
- 資本金の額(基準資産額の充足)
- 役員の構成
これらは会社設立の専門家である司法書士さんであっても、旅行業法の細かな登録要件までは把握していないことが多いため、事前の法務チェックが不可欠です。

既存の会社で旅行業登録を計画する場合
既に運営している会社で新しく旅行業部門を立ち上げる場合は、以下の書類を準備して相談に臨むと、スムーズな判断が可能です。
- 定款および履歴事項全部証明書
- 直近の法人税確定申告書一式(決算書含む)
- 営業所の賃貸借契約書(借りている場合)
- 旅行業務取扱管理者の合格証または認定証
特に「決算書」は、現在の財務状況が基準資産額の要件をクリアしているかを確認するために必須となります。また、管理者の資格者が社内にいない場合は、どのように確保するかも早期に検討しなければなりません。
旅行業登録の要否に関するご相談について
当法人では、「自分のビジネスモデルに旅行業登録が必要か」という適法性の判断について、多くのご質問をいただきます。しかし、正確な判断には事業実態の深いヒアリングが不可欠であり、誤った回答は「無登録営業」という重大な法的リスクをお客様に負わせることになりかねません。
そのため、当法人では「無料の問い合わせ」と「有料の個別相談」の範囲を明確に分けて対応しております。
1. 無料でお答えできる範囲(お問い合わせ)
弊社の法務サービスの内容や、手続きの流れ、お見積りに関するご質問については、メールやお電話にて無料で回答しております。「登録申請を依頼したい」「どのようなサポートが受けられるか知りたい」という方は、まずはお気軽にお問い合わせください。
2. 有料での対応となる範囲(適法性診断・個別相談)
「この事業プランに登録は必要か」「今のスキームは旅行業法に抵触しないか」といった法令の解釈が伴うご相談は、観光法務コンサルティング(法令調査業務)として有料にて承っております。
- 相談方法:Zoomによるオンライン、または当法人オフィス(都庁前・武蔵小杉)へのご来所
- 予約方法:メールまたはお電話にて、事前の面談予約をお願いいたします
品質と社会的責任について
一部の事務所では要否の判断を無料で行っているケースも見受けられますが、行政書士法人シグマでは、回答の品質には重い社会的責任が伴うと考えております。
有料業務としてお引き受けすることで、時間をかけて事業詳細を精査し、将来的なリスクを排除した責任ある回答をご提供いたします。確実かつ安全に事業をスタートさせたい事業者様は、ぜひ本コンサルティングをご活用ください

















国土交通省
関東運輸局
東京都庁



