旅行業は、登録の種類によって取扱可能な旅行商品が異なっています。そして登録申請の要件もまた、種類によって異なっています。
旅行業登録の要件については、基準資産額を含め要件を満たすか否かに悩まれる方が非常に多いです。そこで、本ページでは第3種旅行業の申請をするにあたり判断しにくい財産的要件(基準資産額)と、人的要件を中心に登録要件をご説明いたします。
第3種旅行業の登録と要件
まず、第3種旅行業の登録を取得した場合、以下の旅行商品を取扱うことが可能になります。
企画旅行 | 手配旅行 | 他社の募集型企画旅行の代売(受託販売) | 旅行相談業務 | ||||||
募集型 | 受注型 | ||||||||
海外 | 国内 | 海外 | 国内 | 海外 | 国内 | 海外 | 国内 | ||
第3種 | × | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
○:取扱可 ×:取扱不可 △:実施する区域を限定(出発地、目的地、宿泊地及び帰着地が営業所の存する市町村(特別区含む)、それに隣接する市町村(特別区含む)、及び観光庁長官の定める区域内に収まっていること) |
自社では募集型企画旅行の企画・実施は行わず、もっぱら受注型企画旅行の企画・実施や、手配旅行の販売を行う場合は、第3種旅行業登録の取得を目指すことになります。
受注型企画旅行や手配旅行に加えて、他の旅行会社の募集型企画旅行の代売を検討されている事業者さんも、第3種旅行業を取得することで、募集型企画旅行の代売業務を取り扱うことが可能です。
前置きが長くなってしまいましたが、ここからは、第3種旅行業の登録を取得するためには、どのような条件(要件)を満たさなければならないかについてお話ししていきます。
第3種旅行業の登録申請は、主たる営業所を管轄する都道府県へ申請書類を提出することによって行います。登録申請に必要な書類は都道府県のホームページに記載されていたり、都道府県の申請窓口で知ることができます。
とはいえ、旅行業登録は、必要書類をすべてそろえて提出すれば、誰でも取得できるものではありません。
当法人にご相談にお越しになる事業者さんの中には、財産的要件と人的要件を整えるのに悩まれている方が多い印象を受けております。
さらに、法人で登録申請を行う場合は、定款と履歴事項全部証明書(登記簿謄本)の商号や目的の記載法についてもルールがあるので、注意が必要です。
財産的要件 | 人的要件 | 事業目的 |
---|---|---|
基準資産額が300万円以上 | 一つの営業所につき、1名以上の旅行業務取扱管理者の選任
※海外旅行を取扱う営業所には、必ず「総合」旅行業務取扱管理者を選任 |
「旅行業法に基づく旅行業」または「旅行業」 |
第3種旅行業の財産的要件
第3種旅行業の登録を取得する場合、基準資産額として300万円以上が必要となります。
基準資産額は旅行業法上の文言であり、資本金を300万円以上にすれば財産的要件を満たしたことにはなりません。
基準資産額=資本金の金額ではない点は、勘違いされている方が多いので、注意が必要です。
それでは、基準資産額の計算方法は、どのようにして行うのでしょうか。
下記の計算式に、申請前直近の事業年度における貸借対照表に記載されている数値をあてはめることで、計算することができます。
計算式
基準資産額=(Aの資産の総額)-(創業費その他繰延資産)-(営業権)-(不良債権)-(Bの負債の総額)-(所要の営業保証金又は弁済業務保証金分担金)
第3種旅行業登録の場合は、上記の計算式に当てはめて計算した金額が300万円以上であることが求められます。もし、基準資産の額が300万円に満たない場合は、増資手続きなどを行うことで、基準資産額を300万円以上にする必要があります。
基準資産額チェックシート(第3種旅行業登録)
基準資産額については、注意事項と計算表をまとめた「基準資産額チェックシート」をPDFファイルでご用意しました。ぜひ貴社の第3種旅行業登録の要件確認にご活用ください。
第3種旅行業の人的要件
営業所の規模・取扱業務に応じた旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。
まず、1営業所につき1人以上の常勤専任で就業する旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。他社に勤務されている方は、選任することはできません。資格を持っている方を雇用はしない、いわゆる「名義貸し」状態は、認められません。
また、従業員数が10人以上の営業所においては、複数の旅行業務取扱管理者を選任しなければなりません。
さらに、旅行業務取扱管理者資格には、国内旅行業務取扱管理者と総合旅行業務取扱管理者の2種類がありますが、海外旅行を取扱う営業所は、必ず「総合」旅行業務取扱管理者を選任する必要があります。
旅行業登録申請手続きでは、旅行業務取扱管理者試験の合格証が必要になります。この合格証を紛失した場合は、旅行業協会に再発行手続きを行ってから旅行業登録申請手続きを進めることになります。
登録拒否条項
申請者が旅行業法で定められている登録拒否条項に該当する場合は、第3種旅行業の登録をすることができません。
個人で申請する場合は、個人事業主の方及び旅行業務取扱管理者が、法人で申請する場合は、取締役・監査役、旅行業務取扱管理者が登録拒否事項に該当する場合は、登録を受けることができません。
(1)旅行業法第19条及び第37条の規定により旅行業、旅行業者代理業、旅行サービス手配業の登録を取り消され、その取消しの日から5年を経過していない者(当該登録を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の期日及び場所の公示の日前60日以内に当該法人の役員であった者で、当該取消しの日から5年を経過していないものを含む。)
(2)禁錮以上の刑に処せられ、又はこの法律の規定に違反して罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していない者
(3)暴力団員等(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第6号に規定する暴力団員又は同号に規定する暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者 )
(4)申請前5年以内に旅行業務に関し不正な行為をした者
(4)営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人が上記(1)~(4)のいずれかに該当するもの
(5)旅行業法第6条第1項第6号において規定する、心身の故障により旅行業、旅行業者代理業を適正に遂行することができない者として国土交通省令で定めるもの又は破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
(6)法人であって、その役員のうち上記(1)~(4)又は(6)のいずれかに該当するもの
(7)暴力団員等がその事業活動を支配する者
会社で登録申請を行う場合の商号・事業目的の記載方法について
第3種旅行業登録申請を法人で行う場合は、定款と履歴事項全部証明書(登記簿謄本)に記載されている「商号」や「事業目的」にも注意が必要になります。
当法人にご相談が多い東京都内に主たる営業所を設置して第3種旅行業の登録申請を行う場合は、東京都の既存旅行業者との類似商号に該当している場合は、第3種旅行業登録を取得できないため、注意が必要です。
また、事業目的の記載には、「旅行業法に基づく旅行業」または「旅行業」とすることが求められますし、兼業で旅行傷害保険の販売を行う場合は、損害保険代理店業といった事業目的の記載が必要です。
財産的要件でお悩みの方へ
第3種旅行業登録を申請するに当たっては、上記の様々な要件を満たさなければなりませんが、実はこれから旅行業登録を始めようとする方々の多くの方は、基準資産額の要件を満たしているかどうかが、判断できずに悩まれております。
新会社を設立して第3種旅行業登録を取得する際は、基準資産額を満たす資本金の額がいくらなのか悩まれている方もいらっしゃいます。
もし、第3種旅行業登録の要件について判断しにくいときは、一度、行政書士法人シグマまでご相談ください。
新会社を設立してからすぐに旅行業登録申請を検討されている方は、会社設立手続きと第3種旅行業登録申請を当法人で代行することも可能ですので、会社設立前にご相談頂けると、設立手続きと旅行業登録申請をスムーズに行うことができます。